「給料は会社で年末調整してるから不動産の賃貸収入だけ確定申告してください」
「2ヵ所でアルバイトをしていますが、1ヵ所は給料が安いので無視しても良いですか」
というように、理由は人それぞれですが「一部の所得だけ確定申告してほしい」という方からの要望やお問い合わせを複数いただいております。
今回はこのお問い合わせに関する内容を記載していきたいと思います。
非課税など一部を除き基本的には全ての所得を確定申告書に記載します
結論からお話すると、確定申告書に記載する所得を自分で選ぶことはできません。
非課税となる所得(詳しくは国税庁のホームページに掲載されているこちらをご覧ください)や確定申告が不要となるものなど一部を除き、原則として全ての所得が確定申告の対象となります。
この所得には様々な形態の所得が含まれるため、例えば「お給料」をもらっている会社員が不動産投資で「家賃収入」を得ていて、さらに土日は「副業収入」も得ている場合には、基本的に「」に記載された3つ全て確定申告書に記載します。
したがって、基本的には所得の種類にかかわらず、全ての所得は適切に申告する必要があります。
「副業は20万円以下なら確定申告不要」に関する注意点
上記の「確定申告が不要となるもの」に関連する内容ですが、「副業の所得が20万円以下だったら確定申告をしなくてもいい」という話を聞いたことがある方は多いと思います。
しかし、この「副業」「20万円」「確定申告不要」という3つのキーワードにはいくつか注意点があり、今回は2つご紹介します。
1つ目の注意点として、確かに税務署に確定申告書を提出する必要はないのですが、それは所得税の話であり、住民税には関係が無いので、市区町村への申告義務は消えていないという点です。
ここで「市区町村へ申告をする」ということに馴染みのない方もいると思いますが、通常は確定申告や年末調整をすることで税務署に所得に関する情報が伝わり、その情報が市区町村にも情報が流れますので、改めて市区町村へ申告をする必要はありません。
しかし、副業の所得が20万円以下だからという理由で確定申告をしなかった場合、税務署は「確定申告不要」なので問題にならないのですが、市区町村としては申告義務を免除していないのに副業収入に関する情報が伝わってこないという問題が発生します。
結果的に副業分の所得が反映されないまま住民税などの金額が計算されることとなりますので、不足分は後日追徴となる可能性があります。
2つ目の注意点として、たとえ副業の所得が20万円以下だったとしても、住宅ローン控除などを受けるために確定申告をする人については、副業についても一緒に確定申告する必要があります。
少し分かりにくいのですが、副業に関する確定申告不要のイメージは「副業の所得が20万円以下だったら確定申告をしないという選択肢もある」というものですので、確定申告書の記載項目から除外されているわけではありません。
そのため、住宅ローン控除など別の理由で確定申告するのであれば、「確定申告をしないという選択肢」を選んでいませんので、副業の所得などを確定申告書に記載します。
一部の所得だけを申告することはできない理由
もともと確定申告書は、1年間の所得金額を全て記載していく書式となっているので、確定申告書を見るだけでその人の所得を全て把握することができる「所得を証明する書類」としての機能をもっています。
だからこそ、住宅ローンを借りるとき、子供を保育園に預けるとき、融資を受けるときなど、様々な場面で提出が求められます。
もし「確定申告書に記載する所得は一部でもOK」であるならば、確定申告書を見てもその人の所得が一切分からないため、所得を証明する書類として全く機能していないことから、誰も提出を求めないでしょう。
また、仮に年収1億円の会社役員が「税金払いたくないから今年の確定申告書には赤字だった不動産所得だけ記載して給与所得は一切記載しない」という確定申告書を作成したとします。
この確定申告書がもし認められるなら、確定申告書上の所得は0円(赤字)、納税額も0円(給料から天引きされていた所得税は全額還付)ということになりますが、このような申告書が認められるはずがないのは明らかです。
これらのことを考えれば、確定申告書に所得の一部しか記載しない方法は間違いであるということが納得できるかと思います。
まとめ
非課税など一部のものを除き、基本的に全ての所得が確定申告の対象であり、一部の所得だけを申告することは避けるべきです。
また、正確かつ一貫性のある申告を行うためには、税理士や税務署など専門家の助言を受けながら進めることが重要です。
そのため、確定申告をご自分で行うことが難しい方や税務上の疑問や不安がある方は、早めに専門家に相談して、スムーズな確定申告を行いましょう。